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2019年第9回エステ感動物語 最優秀作品賞

第9回エステティックグランプリのエステ感動物語 エステティシャン部門の受賞作品をご紹介します。

2019年第9回エステ感動物語 最優秀作品賞「KIREIの幸せ」

ある日、フロントから外を眺めているとお店にゆっくり近づいてきて、ドアの前の看板を じっと見つめる女性がいました。見た目は高校生のように見えました。

ゆっくりドアを開けて、「脇の脱毛をしたいんですが……」と小さな声で言われました。
その日はちょうど予約が空いていたのですぐにお席にご案内し、お話をさせて頂くことに。
ご来店頂いたきっかけは妹さんに「恥ずかしいから脱毛してきて」と言われたことでした。
温泉に行った時に言われたそうです。
お客様は脇の脱毛をご希望でしたが、他にも気になる箇所があるかお伺いすると 「あまり気にしてないんですよね。自分では見えないから………」と。

お客様は生まれつき視力が弱く、眼鏡をかけても0.1ほどしか見えないそうです。
確かにカルテの内容を読むことも書くことも難しいと言われたので、全て口頭でやり取りをしたくらいです。
そのため、自分では体の毛などほとんど見えないので気にしてなかったけど、 妹さんに言われて気になりだしたようで、勇気を出してお店に来て下さいました。
お話していくうちに、学生だと思っていたお客様は実は27歳で栄養士のお仕事をされていることや、好きなスポーツについてや好きな物についてなど、とてもおしゃべりが好きな方のようで色々とお話して下さいました。
初めの印象とは打って変わって、とても明るい方なんだな、と思いました。
そして、数ヵ月後には妹さんの結婚式があるのでそれまでにできる限りキレイにしたい!
ということで、これから通って頂くことになりました。

初めてのお手入れの日、お客様は緊張した様子でしたが少しでもこの時間が楽しく、心地の良いものであること、とにかく気持ちよくなってもらおう!という思いで精一杯お手入れさせて頂きました。
お手入れをしながらお話をしていると、カウンセリングの時とは違って、少しネガティブな 発言が度々出てくることが気になりました。

習い事をしてみたいし、何か趣味も見つけたいけど目が見えないからな……

お客様の視力では車の運転免許は取れません。
移動も基本は歩きかバスや電車、またはご家族に車を出してもらうしかありません。
私たちの住む山口県では車は必須です。ないと不便でどこかに行くのも大変です。
お客様は何をしようにも1人での行動範囲が限られたり、周りにどう思われるのか気になって諦めてしまうのかな、と思いました。
何もかも諦めてしまっているような発言に胸が痛みました。
私も視力はかなり悪いですがコンタクトや眼鏡で十分見えるので、私にはとてもお客様の辛さは分からないのかもと思い、ひたすらお話を聞くことに集中しました。
しかし、お話の内容があまりに切ないので今度はこちらからお仕事の話を振ってみると、仕事でもルーペを使用したりはするけれど特に支障もなくお仕事ができているようでした。
もちろん視力のせいで出来ないこともあるそうです。
そういったもどかしさもあり、お仕事には多少の不満もあるようでしたが、
普段は盲ろう者友の会のイベントなどで通訳介助員として県外に行かれることは多いみたいで、そのことについてはとても楽しそうにお話されます。
しかし、新しく何かを始めたりすることはやはり躊躇してしまう様子でした。
そして話していくうちに、お客様に足りないのは自信かもしれないと感じました。
とにかく、やりたいことはあっても視力のせいでできない、諦めてしまう。
周りの人から差別や偏見で見られたくはない……
けど、普通の人と同じようにはできない。私の苦労は普通の人にはわからない。

言葉の端々にそう言った思いを感じることが出来ました。

その日からどうしたら自信を持ってもらえるか、私は次のお手入れの日まで毎日毎日考えました。そして、ふとお店のお客様を見渡すとおのずと答えは見えてきました。

そうだ。お肌をキレイにして、モチベーションを上げてもらう。
周りの人たちからキレイだねって褒めて貰えるようになればお客様も前向きな気持ちになれるのではないだろうか!

私たちのお店はお肌のトラブル改善に自信があります。
たくさんの方々がキレイになって喜ばれている姿を何度も見てきました。
表情や性格までも変わって明るく内面から美しくなる、たくさんのお客様たちの姿をお手本に女性として美しくなる喜びを手に入れてほしいと思いました。
しかしあまり見えないのであれば化粧品を使いこなすのは難しいだろうか…
様々な不安がありましたが、とにかく自信をつけてほしいという思いで さっそく次のお手入れの時にフェイシャルケアのご提案をさせて頂きました。
肌はそこまで気にしてない、というかトラブルが全く見えないのでテカリぐらいしか 気にしたことはない。
と、私が予想した通りのお返事でしたが、 とにかく1度お手入れをしてみてください。ぜひご自身へのご褒美に!と伝え 次回のお手入れの時にフェイシャルケアも受けてくれることになりました。

そしてお手入れの日。私の話に真剣に耳を傾けて下さり、実際にお手入れを受けた後は ずーっとご自分のお肌を触り、気持ちいいと喜ばれている姿がありました。
どんな風に変わったかは目でははっきりとはわからないけど、今までで1番お肌がツルツルで気持ちいいのは分かる!!
と、嬉しそうにずっとずっとお肌を触り続けていたお客様の笑顔に安心した私は、 これまで考えてきた私の想いを伝えました。

「まだお会いして数回ですが、お話させて頂いた中でお客様はとても向上心が強い方なのに色々なことを諦めてしまってもったいないなと感じました。
初めてのお手入れの日からずっと、何かして上げられることはないかと考えていました。
私がお客様のためにして上げられるのはお肌をキレイにして上げることだと思いました。ぜひお客様にも美しくなる喜びを知って、幸せになって頂きたいんです。」

包み隠さず想いを伝えました。

現在、お客様は日々楽しみながらお肌のお手入れを頑張ってくれています。
お客様専用の手作りのお手入れノートを作成し、スキンケアの順番や注意点を見やすいように大きく書き、お肌の状態や気になるところなどを記入しあい、交換ノートのようにお客様とやりとりしています。
毎日楽しんでお手入れをして下さり、妹さんの結婚式の時には親戚の方にノーファンデーションであることをすごく驚かれたと言われました。
何度も頬を触られ、キレイね!と褒めてもらったと嬉しそうにご報告して頂きました。
その笑顔を見て、私もすごく嬉しかったです。
お肌がキレイになるとお客様自身、色んなことが変わりました。
今まで着たことのない服を着られたり、髪型を変えたり。
恋がしたい、彼氏が欲しい、結婚もしたい!と明るく言われるお客様を見て ただただ嬉しかったです。

エステでお肌をキレイにすることで、周りの方から褒めていただき、 見られているという意識が芽生えると着る服も髪型も表情も歩き方も変わる。
小さくなって歩いていた、高校生のようなお客様が今ではおしゃれをしてお手入れを楽しみにして下さっている。
その姿を見て、エステティシャンになって本当に良かった、と感じました。

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